ハリケーン・カトリーナへの対応の不備の実像に迫る

アメリカのPBSが制作した「The Storm」と題するドキュメンタリーを見た。ここで、Windows MediaおよびReal Mediaのストリーミング映像を見ることができる。ハリケーンカトリーナへの対応の不備を多くのインタビューや事実を通して深く掘り下げていてとても面白い。
対応の不備は起こるべくして起こり、不備自体単純なものではないし、その原因も根が深い。
番組には多くの当事者や専門家へのインタビューが使われている。当時の連邦危機管理庁(FEMA)の長官や、その上部組織である国土安全保障省の長官も登場する。そして、番組ではFEMAの歴史についてもかなりの時間が割かれている。
最大の問題はFEMAが期待されたように機能しなかったことだと私は解釈したが、それは必ずしも当時のFEMAの長官の落ち度とは言えない。現在のFEMAの体制では本来の機能を果たしようがない。人員も予算も設備も到底十分とは言えない。現在のFEMAの体制に対して最終的に責任を持つのは大統領だが、実はFEMAはできてからちゃんと機能した期間はそれほど長くなく、現在の大統領が他の大統領より特に悪いとは言えない。クリントンの時代、FEMAは現在よりずっとよく機能していたのではあるが、FEMAができたカーターの時代、それに続くブッシュ父の時代も十分には機能していなかった。FEMAができてからブッシュ父の時代まではハリケーンが少ない時期に当たり、そもそも活躍の場が少なかった。
FEMAが主犯としても、市や州、州兵(national guard)にも事態を軽くできる可能性はあった。たとえば市は多数のスクールバスを持っており、州兵にそれを運転させて住民の避難に使うことができたかも知れない。しかし、そういった判断は危機管理の専門家でないとその時点では下せないようにも思える。番組からは危機管理の専門家が市や州にはほとんどいなかったように見えた。市長や州知事が専門家の助けなしに適切な陣頭指揮が取れるとは思えない。自分の下に危機管理の専門家を置いていなかったのは市長や州知事の怠慢とも言うことは可能ではあるが。