コンテナによる輸送革命

私の5段階評価で4の、面白い本だった。邦訳もあるが私は原書のKindle版を読んだ。以下のようなことが詳しく述べられていて、いわば「コンテナ輸送史」と言える。

  • ここで言うコンテナとは、幅・高さ8フィート以上、長さ20フィート以上で、船・トレーラー・専用の貨車に乗せて運ばれるものを指している。配送元で荷物が積み込まれたコンテナは、基本的に最終目的地までまで開けられることはなく、その間、例えばトレーラー・船・トレーラーと積み替えられて運ばれる。
  • コンテナ以前は箱詰めされた荷物を積み込んだり、運び出したりの労働集約的作業が必要で、それは船での輸送で顕著であった。そして、しばしば荷物が目的地に着くまでに何回か積み替え作業が発生した。更に積み降ろし作業の過程での盗難・破損も多かった。
  • 1956年にアメリ東海岸の国内運送でコンテナ船とコンテナ用トレーラーが使われはじめ、徐々に他の船会社、道路運送会社、国際航路、各国の鉄道へと広がっていった。しかし、その道のりは平坦ではなく、港湾労働者のストライキ、港を管理する自治体の無理解、鉄道会社の無関心を乗り越え、コンテナの国際規格の策定、従来の港湾都市の没落・新たな港湾都市の台頭、海上運送会社の倒産・世界規模での再編を経て、開始から40年ほどをかけて、現在のような姿になった。
  • コンテナにより輸送コスト、特に長距離の輸送コストが劇的に下がった。その結果、付加価値の低い種類の工場生産は、労働力などが安い地域・国へと移動した。また、世界中のいろいろな場所で生産された部品や中間製品を労働力の安価な最終組み立て地に集めて最終製品にし、それを世界中に売る、という国際分業が可能になった。

少し気になった点として、誤植というか電子化の際の誤りがある。例えば「ペーパバック版への序」に「con tainers」「be cause」「re counted」といった部分があった。読む上で大きな障害にはならないが、あれ、と思わされる。Kindleで英語の本を何冊か読んでいるが、このようなことはなかった。