アメリカの個人情報窃盗事情と対策

Future Tenseというラジオ番組の9月16日の回の題名は「Keeping up with identity theft scams」で、そのポッドキャストを聞いた。8分半と比較的短いが興味深かった。番組のウェブページからはReal Mediaのストリーミングが聞ける。ページ上にMP3ファイルへのリンクはないが、ここからダウンロードできる。

番組の内容

個人情報窃盗(identity theft)の件数は2002年から2004年にかけて55%増加している。盗まれた個人情報で作られたクレジットカードを使われるなどして傷が付いた信用履歴(credit history)を修復するのに要する時間の平均は330時間である。*1

フィッシング詐欺(phishing)は趣味的なものから非常に高度なもの(art)に変化している。最近の手口でこういうものがある。銀行の利用者満足度アンケートを装い、「謝礼をお送りしますから口座番号をご記入ください」となっているというものである。

電話による個人情報窃盗では以下のような手口が報告されている。

窃盗犯:(地元の裁判所を装ってかなり怒った口調で)「逮捕状が出ている。理由は陪審員としての義務(jury duty)を果たしすために出頭していないからだ。」
被害者:「召喚状(summons)を受け取っていない。」
窃盗犯:「確認するから社会保険番号、生年月日、住所を言ってくれ。」
被害者:(逮捕を恐れて、ついそれらを言ってしまう。)
窃盗犯:「こちらの間違いだった。陳謝する。逮捕状は破棄する。」

こういった手口にひっかからないためには、まず相手の名前と所属、電話番号を聞き、確認のために一旦電話を切る。番号案内などで地元の裁判所の電話番号を調べて、電話する。そして、人事課などでその人物が所属しているか確認する。

更にこんな事件もあった。自分に不利な(unpalatable)判決を言い渡された人物が裁判官と裁判所員に対して名誉を毀損された(damage to reputation)として30万ドルの請求書を送りつけた。受け取った側は当然無視した。それに対してその人物は請求金額に対する個人的先取特権の申し立てをおこなった(filed personal liens)*2。それは直ちに信用記録(credit record)に反映されてしまい、裁判官と裁判所員は傷ついた信用記録を元に戻すのにほぼ1年を要した。公的記録が悪用された例である。

被害を防ぐために以下のようにすることをお勧めする。年の初めにExperianに対して信用報告を請求する。そして、4ヵ月後にEquifaxに対して信用報告を請求する。更に4ヵ月後TarnsUnionに対して請求する。そして、それを繰り返す。こうすることにより、4ヶ月ごとに無料で信用報告を受け取ることができる。

2005-09-22追記

電話による窃盗を防ぐ方法を書いていなかったので追加した。

2005-09-30追記

WARNING: Nasty ID Theft Scamという記事で、この手口が紹介されている。ということを「米国オンライン詐欺事情・コメンタリー」のこのエントリで知った。

*1:実働でこれだけの時間手続きややりとりをおこなわないといけないということ。1週間に8時間そのために時間を割いたとして41週間かかるということである。

*2:もっと適切な表現があるかも知れません。私は法律は専門でないので。