FDA and Plan B

Science Fridayというラジオ番組の表題の内容を聞いた。事後に服用する経口避妊薬が米国でまだ市販薬として認可されていないことに関する専門家の討論である。話題自体も興味深いが討論の進み方や聴取者の発言の入り方も興味深い。表題のリンク先でストリーミング及びMP3ファイルが提供されている。

討論に入る前の導入

「Plan B」*1と呼ばれる経口避妊薬(いわゆるピル)があり、これは事後72時間以内に服用すると効果がある。

  • メーカーが2003年に米国食品医薬品局(FDA)に対して市販薬(over the counter drug)として処方箋なしで買えるよう認可を申請した。
  • 専門家による諮問委員会(advisory committee)が23対4で認可を諮問した。
  • FDAティーンエージャーの性行動に影響を与えるかも知れないとして諮問を無視した。
  • メーカーはFDAに対して17歳以上にのみ市販を認めるよう再度申請した。
  • 今年8月になってFDAは60日間の一般からの意見を期間(public comment period)を設けると発表した。
  • Plan Bに対するFDAの扱いに対してFDA女性保険衛生部長(director of women's healthは辞任し抗議した。

Plan Bの概要

  • 通常の経口避妊薬と同様のホルモン薬である。
  • 医師の処方箋があれば買える。
  • 具体的な効果は排卵の抑止と着床の阻害である。
  • すでに着床している受精卵には影響を与えない。

討論の内容は(一部である。すべては書ききれない)

  • 市販されると本来医師を訪れるべき機会に訪れなくなる。
  • それは市販薬すべてについて言えることだ。
  • 市販されると10歳の子供でも買うことができるようになるが、調査では読み書き能力が低い人々(low literacy group)では70%、全体でも33%が用法を正しく理解できなかった。
  • 10歳の子供に薬店で販売するとは思えない。そんな極端な話をしてもしょうがない。
  • 事後避妊薬*2について以下の内容の研究が発表されている。
    • スコットランドで市販されても中絶率が減らなかった。
    • 事前に用意していても、事後避妊薬によって妊娠率は減らなかった。
    • 事後避妊薬は、他の避妊法より効果が劣る。
  • これらの研究はすべて通常の避妊法の効果を見るためのものだ。そして、どの研究も事後避妊薬がリスクの高い性行動を助長したことは示していない。これらの研究は確かに事後避妊薬が妊娠率を減少させる効果を示してはいないが、同時に事後避妊薬市販によって懸念されているようなことも何も示していない。
  • 事後避妊薬は早く服用するほど効果が高い。翌朝、処方してくれる医者を探して行き、在庫している薬局を見つけて買う(ニューヨークでも在庫している薬局は15%以下)のでは有効に働く期間を逃してしまう。

*1:本来の計画がうまくいかなかったときのためのバックアッププランという意味でよく使われる言葉。

*2:番組ではemergency contraceptionと言っているが、このエントリでは事後避妊(薬)と書くことにする。