The Arms Trader

This American Lifeというアメリカのラジオ番組の表題の内容を聞いた。911テロ事件以後、アメリカのテロ対策が予防に力を入れている。予防活動の成果として連邦政府が引き合いに出す1つの事件についての報告だ。難易度はやや高めですが、かなり面白いと思った。表題のリンク先に、その紹介とReal Mediaストリーミングへのリンクがある。有料でMP3の配信もある。以下、概要を紹介する。

70歳でインド出身、イギリス国籍のヘーマント・ラカーニが2005年4月23日にテロリストの支持者として有罪の評決を受けた。ロケット弾をテロリストを名乗るFBIのおとり捜査官に引き渡したことで逮捕・起訴された結果である。この事件はアメリカ愛国法の見直しの際にテロ予防の成果として挙げられている3事件のうちの1つである。

石油事業の出資者を求めていたラカーニに対して、パキスタン出身のおとり捜査官は最初、ビジネスマンとして接触した。そして、武器を売ってもらえないかと持ちかけた。ラカーニは潜水艦やプルトニウムでも扱えると答えた。そこで、対航空機用ロケット弾200発の取引をすることになった。実際の取引に先立って、ラカーニはロケット弾を扱えることを示すために、まず1発だけ売ることになった。そういった話がまとまった時点で捜査官はアフリカのテロ組織に属していると伝えたが、ラカーニは意に介さなかった。

翌週にはロケット弾を渡すとの約束だったが、1年以上たっても引き渡されなかった。おとり捜査官は頻繁に催促をし、いつでも決まって「すぐにでも届く」とラカーニが答えていのだが。しびれを切らしたFBIはロシアの捜査当局に依頼してにせの武器商人に、本物のロケット弾の爆薬だけ抜いたものをラカーニに渡させた。ラカーニはそれを受け取り、おとり捜査官に渡したところで逮捕された。

ラカーニは実際に武器の合法的取引の経験はあるが、武器商人とは言えない人物だった。暗視ゴーグルも知らない、ロケット弾の現物を見たこともなければ操作方法も知らなかった。テロリストは入手経路の発覚を防ぐために武器のシリアル番号を消すことも知らなかった。プルトニウムについても実際には無知だった。また、ロケット弾の仕入れでは、本来必要な手続きを知らないし、売り先がテロリストであるにも関わらず自分の本名を仕入れ先に伝えていた。

ラカーニはロケット弾をFBIが手配した仕入先から仕入れて、FBIのおとり捜査官に渡しただけだ。FBIの手引きがなければ仕入れられなかった可能性がかなり高いし、実際にテロリストに売ったわけでもない。

ワシントンポストの調査によると、911テロ事件以降、テロ活動で起訴された400人以上のうち、テロ活動で有罪になったのは39人で、うち14人がアルカイダとの関連が認められている。ラカーニはその14人に含まれている。