Malcolm Gladwell

IT Conversationsで配信されているMalcom Gladwellの講演を聞いた。最もダウンロード回数が多い内容として今週の推薦になっていたからだ。内容は人間の好みについての考察だ。推薦に恥じないとても面白い内容だと思った。

まずHerman Miller社のAeron chairが発売前の市場調査では座り心地は最高だがデザインが最悪だと評価されたこと取り上げている。椅子が商業的に成功を収めるためには座り心地とデザインは両方がそろっていないとだめなのだそうだ。従って市場調査に従っていたならAeron chairは今の形では発売されなかったことになる。ところが発売してしばらくするとデザインが評価され始め1・2年後にはデザインで多数の賞を貰ったり映画に登場するようになった。そして、商業的に最も成功した椅子となった。

次にコカコーラが市場調査に従って味を変えたところ、売り上げが大きく落ち込んでしまったことを取り上げている。日本でもやっていたペプシチャレンジというキャンペーンがあった。見た目には分からないような形でペプシとコークを飲み比べてもらい、好むほうを言ってもらうというものだ。その結果ペプシを選んだ人が多かった。コカコーラは大いに危機感を抱き、市場調査を基に味を変えた。そして、目隠しテストで確実にペプシに勝つ製品にした。その結果はこの段落の最初に書いた通り、大失敗だった。

講演者の分析はこうだ。まず人の好みはそもそも簡単に惑わされる。そのため市場調査は本当の好みと逆の結果を出してしまうことがよくある。Aeron chairは理想を追求した結果、従来の椅子とはかけ離れたデザインになってしまい、ちょっと見には悪いデザインに見えた。しかし、見慣れるうちにだんだん良いデザインと理解されるようになった。コーラについて言えば、ペプシチャレンジは一口づつの飲み比べで、それだと甘いほうが好まれる傾向があるそうだ。一方、実際に飲むときには200ccあるいはそれ以上を一度に飲みますから、あまり甘くてはだめだ。

椅子とコーラについても講演の中ではもっと詳しい背景と分析がされている。そしてこれ以外にも2・3事例を挙げて分析・洞察を加えている。