予知や予測の科学ーー選挙、プロスポーツ、経済、ギャンブル、天気、気候、地震、テロ活動などの

The Signal and the Noise: Why So Many Predictions Fail-but Some Don't

The Signal and the Noise: Why So Many Predictions Fail-but Some Don't

The Signal and the Noiseは、様々な予知や予測について科学的に考察・紹介した本である。著者は元KPMG(著名な会計事務所)勤務で、そこを辞めたあと米国プロ野球選手の成績予測や、米国大統領選挙の予測などで大きな成果を残している。一時期はオンラインポーカーで生計を立てていたが、規制が強化されてプレーヤーが減りカモがいなくなって逆にカモられるようになって止めた。
地震に関する章で、地震の規模と頻度について触れている。小さな地震の頻度が高く、大きな地震の頻度は低いのは常識だが、頻度と規模の間には法則がある。ある地域で起こる地震マグニチュードと頻度を横軸縦軸とも対数のグラフにプロットすると直線状に並ぶのだ。そのグラフから考えると、これまでマグニチュード9の地震が起こった記録がない地域でも、それが起こる頻度を推定できる。そして、地震について分かるのはどの地域ではどの規模の地震がどれくらいの頻度で起こるかだけで、いつ起こるかは予測できたためしがないことを、実例を挙げて述べている。
テロ活動に関する説明では、テロ事件の規模と頻度に地震と同様の傾向を見出している。NATO加盟国で起こった各テロ事件ごとの犠牲者の数と、その規模のテロ事件の起こる頻度とを、両対数のグラフにプロットすると、直線状に並ぶ。
本全体を通してベイズ理論(新たな事実・観測により予測とか確率を変更していく)が底流にある。そして、筆者の統計学の素養も。それらの基本は常識として身に付けなければなあと思わされた。