脳の成長過程
- 新生児は脳に1000億の神経細胞を持つが、神経細胞間の接続はまだ少なく、ミエリン鞘を持つものも少ない。ミエリン鞘を持つ神経細胞は信号をより早く伝え、効率よく情報処理をおこなえる。
- 10歳までに何兆もの新たな接続が形成される。小さい頃の経験は発達や学習の基礎となるだけでなく、脳の配線に直接影響を与える。そして、その配線は感覚、言語、思考に深く影響を与える。経験は子供の発達に影響を与えるだけでなく、脳の形成の仕上げをおこなう。
- 脳の形成の約4分の3は出生後におこなわれ、環境と経験に呼応している。持って生まれたものと、環境の両方が脳を形作る。
- 出生後1年間は特に脳の発達が顕著である。画像診断によれば生後12ヶ月までに健康な青年の脳と似たものになる。
- 3歳までに約1000兆の接続を持つようになる。これは大人の約2倍である。
- 3歳から10歳までは社会的、知的、感情的、肉体的に急速に発達する時期である。この時期の脳の活動は大人の2倍以上である。神経細胞間の新たな接続は生涯形成され続けるが、脳がこの時期ほど、新たな技能を身につけたり、逆境に対応する能力を持つことはない。
- 11歳になると脳の不要な接続が急速に取り除かれ始める。残った神経回路は特化され効率的になっている。脳は「使わなければ衰える」の典型例である。小さい頃に繰り返し使われた接続は残り、使われなかったものは取り除かれる。
- 脳の前部3分の1にあたる前頭前野は思春期の後半から20歳代中盤まで発達し続ける。18歳は大人とも考えられるが、脳は完成とは程遠い。前頭前野のミエリン形成は25・6歳まで続き、司令塔であるその部分をより高度で効率的にする。
先日、このブログにダニエル・エーメン氏(Daniel Amen)の講演を基に脳の三次元画像の精神科医療への応用と題する記事を書いた。上記は、そのエーメン氏の著作「Making a Good Brain Great」の一節である。この本は一般向けに平易に書かれていて読みやすい。大人向けのものとしては英語の新聞や雑誌、小説よりずっと読みやすいので、興味のある方は読んでみてはどうだろうか。
2009-10-17追記
私は原書のハードカバーで読んだが今はペーパーバック版が出ている。
- 作者: Daniel G. Amen M.D.
- 出版社/メーカー: Harmony
- 発売日: 2006/12/26
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 13回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: ダニエル・G・エイメン,早川直子
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2006/12/26
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
上記の脳の成長に関する記述は脳科学の世界で広く受け入れられているのだと思うが、エーメン氏の脳画像診断は現時点で他の脳学者科学者に受け入れられていない。氏はこの本の他何冊もベストセラーを出しているが、それらの本の内容には脳科学者に受け入れられていない内容も多く含まれると思われる。