米国のミサイル防衛の実態

FrontlineというPBSのドキュメンタリーで米国のミサイル防衛の実態をリポートした「Missile Wars」を見た。ここWindows Mediaのストリーミングが見られる。米国がミサイル攻撃を受けた場合に、ミサイルを迎撃する防衛システムのリポートである。2002年放送でやや古いが、興味深いものだった。
印象に残った点は:

  • 弾道ミサイルは小国が米国に脅威を与える方法として効率がよくない。本気で脅威を与えたいならもっと別の手段を使うだろう。情報局員(intelligence community)のコンセンサスとして北朝鮮は近い将来弾道ミサイルを配備できる国はない。
  • これまでにおこなわれたミサイル迎撃技術のテストは現実とはかけはなれたものである。たとえば迎撃対象のミサイルが無線標識(ビーコン)を発していたことがある。迎撃を避けるためにミサイルはレーダーでは本体と識別不可能なおとり(アルミ箔の風船)を分離することが予想されているが、実験ではわざと非常に見分けやすいようなおとりを使っていることもあった。にもかかわらず失敗した実験もある。
  • レーガン大統領の「戦略防衛構想」をはじめとして、ミサイル防衛計画は技術上の問題や、重要度の低さから何度も頓挫している。しかし、ミサイル防衛を推進しようとする動きは根強く、ブッシュ大統領になってから開発が再開された。
  • 現在までにミサイル防衛に650億ドルがつぎ込まれ、完成までには2000億ドルが使われると見積もられている。

番組の最後にSam Nunn元上院議員の言葉として「National missile defence has become theorogy in the United States. Not a technology.」(米国では国家ミサイル防衛は神学になってしまった。テクノロジーではなく。)が紹介されていた。