第一級の仕事に関するリチャード・ハミングの観察と考察

ベル研究所のもと所員で、符号理論に「ハミング距離」「ハミング符号」といった名をとどめているリチャード・ハミング博士が、1986年に興味深い講演を行った。講演の主題は、歴史的な成果を残すためには、科学者が研究にどう取り組むべきかということだが、研究に限らず重要な仕事を成し遂げるのに大いに参考になると思う。
講演は50分ほどの本体とそれに続く質疑応答で、全体の筆記録がここにある。自分自身の理解を深められればと思い日本語に訳してみた。以下の要点を見て興味を持たれたら、ぜひとも講演全体の原文あるいは日本語訳を読んでみて欲しい。講演本体は訳したが質疑応答はまだ訳していない。
第一級の仕事を成し遂げる秘訣としてハミングが挙げているのは以下の点である。

重要な問題に取り組む
重要でない問題に取り組んでも重要な成果は上げられない。
勇気を持つ
勇気を持って、重要な問題を解決できると信じるならば、そうできる。できないと思っていればほぼ確実にできない。
障害に出会ったら、見方を変える
障害と思えていたことが、実はチャンス・利点であることがしばしばある。
情熱を注ぐ
知識と生産性は複利計算で増える。能力がまったく同じ2人のうち一方が毎日1時間余分に考えると、一生のうちに生み出す成果の差は膨大になる。
やっていることを適度に信じる
先へ進むのに十分なだけ信じ、間違いや欠点に気づくのに十分なだけ疑う。信じる度合いが強すぎると欠陥に気づかず、疑う度合いが強すぎると、取り組めない。
心のドアをあけておく
職場で自分の部屋のドアを閉めておく人は、今日・明日は生産性が高いが、何が重要か分からなくなってしまい、重要な問題に取り組めない。
先人の成果を活用し、他の人の仕事の土台となるような仕事をする
ニュートン曰く「私が他の人より遠くまで見通せているとしたら、それは私が巨人の肩の上に立っているからだ。」
聞き手が望むことを考えて自分の成果を売り込む
聞き手が望むのは広範囲で全般的な話である。まず、おおまかな絵を描いて、その課題がどうして重要なのか説明した上で、解決策のスケッチを描く。
組織を活用する
何でも自分でしていると、自分だけでできる以上のことができない。組織を活用すれば、組織が支えられる限界まで仕事ができる。
組織と戦わない
組織を改革することと、一流の仕事の両方ができる人はほとんどいない。
自分自身を知る
自分の欠点、自分の強みを知り、欠点を強みに転換する方法を考える。