クリス・アンダーソン、ロング・テールを語る

ロング・テールという概念を雑誌Wiredの記事で2004年に提唱し、最近まさに「The Long Tail」と題する本を出版したクリス・アンダーソンがラジオ番組Tech Nationに出演していた。以下で聞ける。
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以下の点が印象に残った。

  • ロング・テールの概念を考えるきっかけとなったのは、eCast社のデジタル・ジュークボックスである。同社のジュークボックスはハードディスクを持ち、インターネットに接続されている。同社が提供している曲のうち何%が1ヶ月に最低限1回は聞かれるかをたずねたところ、98%ということだった。提供する曲が増えていっても98%でありつづけている。同様のことはAmazon.comによる書籍販売、NetflixによるDVDレンタルでも言えることが分かった。そこで、「98%の法則」を思いついた。つまり、これらのサービスではほとんどのコンテンツが売れているという法則である。
  • ロング・テールという概念自体は自分自身が発案したものではない。経済学上の概念として、fat tail, heavyk tail, long tailといった名前で呼ばれる概念として存在していた。私は尾の太さではなく長さに注目したのでlong tailという言葉を選び、インターネットによるコンテンツ流通に関する概念として固有名詞The Long Tailとして使うようになった。
  • ロング・テールではまずway inが行われ、続いてway outが行われる。way inとは在庫を集約して、大規模な品揃えを可能にすることである。Amazon.comの新刊書籍の流通を考えればよい。way outとは、分散している在庫の情報をまとめて、多くの人が検索により在庫に到達できるようにすることである。Amazon.comの古本販売がこれに当たる。Amazon.comが古本業者の情報を集約し、同社のウェブサイト上から注文できるようにしている。Amazon.com自体が古本を在庫しているのではなく、情報を提供し、注文の仲介をしているだけである。
  • ロング・テールという本を執筆するに当たっては、ブログを大いに活用した。本のベータ版を無料で公開するのと引き換えに、提案やアイデアをブログ読者から貰ったのである。これにより本の内容が充実したし、Wired誌の記事から本出版までの長い間、人々の関心を途切れさせずにいることができた。ブログはプロフェッショナルが自らのブランディングを行うツールである。ブログで無料で情報を提供することで、プロフェッショナルとしての評判を得ることができ、そのことが新たな仕事に結びつく。